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大阪商業大学商業史博物館メールマガジン第141号

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□ 大阪商業大学商業史博物館メールマガジン
■-■      Pull-Top
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■-■-■-■ ─ 第141号 ─
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2018/11/20 ━

 ‘Pull-Top’はご存知のとおり、缶コーヒーなどの開け口つまみ付きの
ふたを意味します。ここでは、利用者のみなさんのアイデアのふたを開け
るつまみ口となるような、エピソードや随想を掲載していきたいという想
いが込められています。
 さあ、アイデアの缶詰のふたを開けましょう。

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★はかりの文化史

 先日、大学で飲み会があった。近隣のおいしい和食のお店で久しぶりに
舌鼓を打った。その会で日本酒党の人がいて、「獺祭一合」とか言って好
みのお酒を注文すると、氷を入れた一升枡に、斜めに寝かせたガラスの徳
利が出てきた。「一合」は尺貫法の単位で、メートル法に直すと180ミ
リリットルである。現在の計量法はメートル法が基準であるが、決して「
獺祭180ミリリットル」とは言わない。何か水薬を飲むようで味気ない。
単位表現がそぐわないのだ。計量文化というものはそういうもので、肌感
覚で使うので日頃はあまり意識していない。

 さきごろ、国際的なキログラムの定義が見直されることに決まり、大き
な話題となっている。今まで質量の基準となる複数のキログラム原器が存
在し、これらの原器にほんの僅かのずれが判明したことで見直しを迫られ
た。来年5月以降はより普遍的で精度の高い物理学のプランク定数を使っ
た定義に見直される。長さの単位メートルの定義はすでに35年前に見直
され、光が真空状態で299,792,458分の1秒間に進む距離ということにな
っている。どちらも科学的で精密ではあるが、実態がなくわかりにくい。

 もともと、地球の子午線の長さを基準に定めたメートル法の基準は、人
間の身体尺をもとにした尺貫法に比べると肌感覚からかけ離れた抽象的な
単位だから、目に見える原器がなくなると一層抽象的でわかりにくいもの
になる。

 度量衡の単位というものは、古くは世界の各地域で生活に密着した基準
をもとに決められ、感覚的に共有されるものであり、それが一つの文化を
形作る基礎となった。しかし、グローバル化が進んだ近代社会においては、
それでは何かと便利が悪い。国や地域を跨いだ交易やコミュニケーション
に支障をきたすからだ。これを回避するための最終型が度量衡定義の定数
化である。

 科学は文化を破壊するといえば語弊があるが、一元的な進化論は歴史の
断絶を意味する。科学の発展とあわせて、計量史を客観的に振り返ること
こそ重要である。

 10月20日(土)から始まった秋季企画展「はかりの文化史」も、既
に1ヶ月を経過した。先週の土曜日には、関連講座のメインイベントであ
るシンポジウムも終了した。アンケートには、計量に対する見方が変わる
話がたくさんあり興味深かった、というコメントもあり、苦労が報われる
気がした。

(池田治司)

┏┓お知らせ
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≪今後の事業予定≫

●平成30年度秋季企画展
 「はかりの文化史」

【会期】平成30年10月20日(土)~11月30日(金)
【場所】大阪商業大学商業史博物館2階企画展示室

 重さだけに限らず、長さ・角度・広さ・体積・時間などを“はかる”道
具は、いつの時代も生活必需品でした。商取引においても、計量は様々な
場面で切っても切り離せない行為でもあります。当館は近年、大阪日本橋
で計量器店を営み、自ら収集家でもあった故匠原永治氏の計量器コレクシ
ョンの寄贈を受けました。この匠原コレクションを核として、歴史的な計
量文化の推移を振り返る。

【関連講座】
ハンズオン「江戸時代のお金をはかってみよう」
江戸時代の両替商には必ずはかりがありました。それはなぜでしょう。
その理由を解説しながら、江戸時代に使われたお金を、実際の両替天秤
で量って作る体験講座です。

【日時】11月24日(土) 午後2時~3時
【費用】材料費:500円
【定員】20名〔若干あきがあります〕
【場所】大阪商業大学谷岡記念館1階会議室
【講師】池田治司(本館学芸員)
(一社)東大阪ツーリズム振興機構主催 ひがしおおさか体感まち博2018
プレ連携事業


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