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表紙には「大福帳」と書かれ、年代は両サイドに「甲子文久四年正月吉日」とある。裏には「鴻池新十郎」と墨書きされた立派な帳簿である。本綴仕立てで、紙質もよく、表裏ともに書くことができる。表・裏表紙には、革紐が埋め込まれている。同家の「上下一統永続亀鑑改正基本帳」を見ると、大福帳は年々新調し、9枚重ねの5袋として、都合45枚をもって1冊とするとしており、同帳の示す通りになっている。口取も4ヵ所あって、諸方預ヶ銀・利入・預り銀・諸払の構成になっている。貸付先は尾州様、藤堂和泉守様(津藩)、酒井若狭守様(小浜藩)、津軽蔵など大名貸しが多く、貸付金利は、月4朱から月8朱ぐらいである。幕末期にもなると、返済できずに元金が滞り、年賦になったり、新たな貸付を望む大名と両替屋との緊迫した闘いが続いていた。預り銀の口取には、大名・分家・別家・懇意な得意先や番頭などの使用人、菩提寺、村人の名前まで上がっている。金利もさまざまで、無利子もあれば、安い金利を付けたり、少し高めの金利を付けたりしている。この金利の高低は、新十郎との個人的な交際、経済的な有無などいろいろ考えられる。諸払は、預り銀の利子の支払いが多い。
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